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藤村ドキドキ コラム

花紅葉
2014年10月28日

母刀自(とじ)の枕屏風に

いやしきもたかきなべて夢の世をうら安くこそ過ぐべかりけれ

花紅葉あはれと見つつはるあきを心のどけくたちかさねませ

おやのよもわがよも老をさそへども待たるるものは春にぞありける

新しく造った小屏風がある。娘お粂がいる。長男の宗太がいる、継母おまんは屏風の出来をほめながら、半蔵の書いたものにながめ入っている。

「作;島崎藤村 夜明け前 第二部下 第八章 冒頭より」

 

馬籠宿界隈も秋のもみじの紅葉の季節が訪れています。

春の桜と秋の紅葉、源氏物語でも紫式部は桐壺に「はかなき花紅葉につけても心ざしを見え奉る」と語らせています。

もみじの紅葉が散り舞い終わると、木曽路には冬の季節がやってきます。

夕暮れの秋の日が沈んだ後のほのぐらい明るさの中で見る、あでやかな花が咲き誇る様なもみじの紅葉は、山が妖艶な錦を纏った様な景色の様に、すっかり目を奪われてあたりがすっかり暗くなるまで見とれ続けてしまいます。

 

「桜」と聞いて連想する歌は近年のJ-POPではずらりと名作が並びますが、「紅葉」で調べて見ると・・・「尺八名調」といった渋い楽曲しかどうも見当たらない様です。

「咲く」イメージの桜と「散る」イメージの紅葉ですが、平安時代の貴族文化の頃から、秋は木々の葉の色づきを楽しみ「花紅葉」と楽しんでいた事が伺えます。

ヒットを狙うミュージシャンの皆さん、今年の秋はビッグヒットを期待して「秋歌」の制作はいかがですか?

 

さて、この藤村の代表作「夜明け前」で描かれているこのシーンは、実際に主人公の半蔵の人物モデルであった藤村の実父、島崎正樹が枕屏風に自作の歌を書き付けて継母に贈答した際の様子が描かれています。

この枕屏風は実際に馬籠宿の島崎家から妻籠宿の島崎家にわたり、藤村ゆかりの人物「こま子」が大切に愛用していた二尺程の屏風です。

本物の屏風には次の様に書き示されていました。

 

いやしくもたかきもなべて夢の夜をうら安く

こそ過ぐべかりけれ

花紅葉あはれと見つつはるあきをこころのどけく

たちかさねませ

おやのよもわがよも老をさそへども待たるる

ものは春にぞありける

 

藤村の本名は「春樹」。

藤村没後、妻籠宿でひっそりと暮らした「こま子」が「待たるるものは春にぞありける」と記された思い出の品を大切にした胸の内を察し、エッセイストの鏡川氏は「私は胸がつまった」と書き記されていました。

 

「春」の穏やかさとは対照的な激しい「生」であった島崎藤村、そして藤村の傍らでやはり激しい「生」を共に過ごした女性達。

静かな秋の夜長に藤村の本を紐解き、かの時代へ思いを馳せませんか?

コラムニスト:とざそし まき

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