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藤村ドキドキ コラム

2014年09月16日
島崎藤村作 「若菜集」より 「秋」
秋は来ぬ
  秋は来ぬ
一葉は花は露ありて
風の来て弾ひく琴の音に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり
秋は来ぬ
  秋は来ぬ
おくれさきだつ秋草も
みな夕霜ものおきどころ
笑ひの酒を悲みの
盃にこそつぐべけれ
秋は来ぬ
  秋は来ぬ
くさきも紅葉するものを
たれかは秋に酔はざらめ
智恵あり顔のさみしさに
君笛を吹けわれはうたはむ
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生家が乱れて、兄と共に9歳で馬籠を離れ、大都会の東京で親戚に身を寄せて暮らす事となった藤村。
幼少の頃に過ごした馬籠での生活の自然の豊かさは、藤村の作品の中で彼が常に「心が思いを寄せる場所」であったのだと思います。
作品を執筆する時間の中で馬籠を思い出し、そしてそれを描いている瞬間、藤村は少年の頃の無垢な「喜び」の時間へと舞い戻る事ができたのかもしれません。
そして何かしら馬籠を描写する時こそが、彼が最も心が寛ぎ落ち着く時であったのだと思います。
若菜集は藤村が世に送りだした初めての詩集です。
まだ小説家として「世に問う」といった壮年の男性的な社会的な思想を交えた作品へ大きく舵を取る事となる前の文壇への「デビュー」作の詩集です。
秋は自分の回りに当たり前の様にあった何もかもが「変化」して変わってゆく事を、若者が謳歌して味わっていた青春の人生が否応無しに微妙に変化して行く事を寂しげに感じている藤村をどこか感じます。
また、敬虔なクリスチャンであった藤村らしく「葡萄酒」「杯」「君」といったキリスト教徒にとって重要な意味を成す語が比喩的にこの作品にもさらりと盛り込まれています。
明治時代中頃のちょっとおしゃれな表現だと思います。
そして、詩で表現された語の綾取りの糸をどう繋合わせるか?によって、この「秋」は全く異なる趣の詩になります。
自然のうつろいを読んだ作品・・・・
キリストの最後の晩餐を感じさせる作品・・・・
恋多き青年藤村が亡くしてしまった思い人の面影を忍んだ作品・・・・
音楽の作詞をされる方は、こういった藤村の「ポップ」だけど複雑に組み込まれた力のある語の世界に随分と魅力を感じられるのではないでしょうか?
そして「飲めば飲む程に醒めて悲しい・・・」
そんな秋の日は「君笛をふけわれはうたはむ」と、一時音楽家を目指していた藤村は書き終えています。
秋は芸術の秋です。
心寂しい時は、音楽でそっと心を癒やしませんか?
コラムニスト:どざそし まき
P1060855

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